1回の製造に1ヶ月かかる無機材料製造でエネルギー効率を大幅改善

1回の製造に1ヶ月を要する材料製造プロセスに対して、加熱に要する投入エネルギー効率を最大化することを目指して、製造条件を最適化した事例です。2回目の実験で省エネなプロセスでありながら品質は従来に劣らない製品を得ることができました。

背景 


 脱炭素社会の実現に向けて省エネルギー技術の開発が求められています。新規材料開発においても同様で、特に、高温での反応・加工が必要な無機材料においては、製造中におけるエネルギーの削減が必須となっています。

課題 


 A社では、省エネルギーに配慮した新製品の開発を進めていました。しかし、製造プロセスの変更に伴って様々な欠陥が生じることで、良質な製品は得られていませんでした。最適条件の探索にあたっては、多くの条件(説明変数)を考慮しなければならないうえに、1カ月に1回程度しか実験できないこともあり、なかなか開発が進まない課題を抱えていました。

アプローチ 


 まず、説明変数が多く存在していたため、ドメイン知識を考慮に入れたうえで、独自の統計モデルを構築し、説明変数を絞り込みました。実験計画の策定にあたっては、ベイズ最適化の手法を用い、最適条件の探索を行いました。その際、1台の装置ではたくさんの実験を行えないため、ドメイン知識も活用しながら最適条件を選択しました。初期データが少ないという課題に対しては、類似する装置のデータを活用することで学習を効率化しました。

得られた結果 


 初期データが10個と非常に少ない中、2回目の実験で今までにない良質の製品を得ることができました。 また、今回得られた製造条件は、高品質の製品を得ることができただけでなく、エネルギー効率も大幅に改善しました。

今後の展望 


 1プロセスが1か月かかる事例においても短期間で成果を上げることができました。今回の取り組みにより、競争力を持った製品になることが期待できます。今後は、当製品の量産化を進めていくとともに、得られたノウハウを水平展開し、他の無機材料にも応用することを検討しています。