膨大なセンサーデータを駆使し、3週間の不良要因解析を1日へ短縮
数百にも及ぶ膨大なセンサーでデータ取得が行われていました。その膨大なセンサーデータを解析し、変数間の相関関係を解析する手法を開発し、不良要因解析3週間程度を要していた不良要因解析が1日まで短縮できる解析基盤を構築しました。
背景
高温環境で使用される材料部品の製造では、粉末を高エネルギーで焼結・成形するプロセスが用いられます。この際、表面品質に影響する不良が発生することがあり、最終製品の性能や寿命に大きな影響を与えます。現場ではセンサーを用いて温度や電力、環境条件など多数のパラメータを常時監視しているものの、膨大なデータに埋もれて真の不良要因を特定することは困難でした。
課題
従来はQC的手法を用い、設計・開発・製造・品質保証など多部門から人員を集め、2〜3週間をかけて議論やデータ分析を行っていました。しかし、解析に時間がかかる上、要因が複雑に絡み合うため見落としが多く、的確な対策につながらないという課題がありました。
アプローチ
不良の兆候や要因は、必ずしも1つや2つのプロセス変数だけでは説明がつきません。不良が起きる背景には、変数間の複雑な相互関係が存在するためです。その多数の変数間の相互関係を捉えるために開発した本アルゴリズムでは、多数のセンサーデータ間の相関関係を自動的に抽出し、短時間で不良要因候補を優先度付きで提示することができます。これにより、人手に依存していた要因分析を自動化し、解析時間を大幅に短縮を目指しました。
得られた結果
従来2〜3週間を要していた不良要因分析が、1日以内に完了するようになりました。これにより、多部門での長期的な調査会議を繰り返す必要がなくなり、迅速な対策立案と実行が可能になりました。また、アルゴリズムにより人間の経験則では見落とされがちな潜在要因も抽出でき、表面品質の改善に直結しました。その結果、不良率の低減と製品の信頼性向上を実現しました。
今後の展望
今回の事例は高温成形プロセスにおける不良要因解析に適用しましたが、同様のデータ駆動型手法は他の材料製造プロセスや部品品質管理にも展開可能です。今後はリアルタイム解析による不良予兆検知やプロセス制御への応用を進め、生産性向上と安定供給に貢献していきます。